漫才ライブ&動画の過剰在庫問題を数値で徹底解剖
漫才ライブにまつわるチケットや動画、グッズの「過剰在庫問題」が今、エンタメ業界の新たな大きな課題として浮上している。
2023年から2024年にかけて、お笑いライブの公演数が急増し続ける一方で、チケットの完売率は大幅に低下。
ライブ会場の空席が目立ち、電子チケットの転売市場では定価を大きく下回る価格で売買が繰り返されている現状は、多くのファンにとっても複雑な心境を生んでいる。
加えて、YouTubeなど動画配信プラットフォームでは漫才動画の登録者数が爆発的に増える一方、一本あたりの再生数が減少、広告単価も下がるという一種の「視聴在庫過剰」状態が進んでいる。
さらに、グッズ販売の現場でも、大量生産によりファンのニーズと合わない商品は在庫として山積みされ、企業の損失につながっている。
劇場と配信が並行する新しい興行形態では、チケットの二重在庫リスクも顕在化。“同じ公演に対し、座席と配信チケット両面の空席問題”が舞台裏を揺るがしているのだ。
そんな複雑な状況のなか、ローソンチケットの直前割引やNetflixの単体配信課金、メルカリのリユース企画など、革新的な仕組みが業界に新風を吹き込んでいる。
なぜ漫才コンテンツは“過剰消費”の壁に直面するのか?
そしてファンと事業者の双方が得をするための突破口はどこにあるのか?
その答えを追いながら、数字と事例を通して最新動向を徹底解剖していく――。
さあ、今まさに劇場の空席からスマホ画面の再生数まで、「漫才の在庫問題」の全貌に迫る旅へとご案内しよう。
漫才ライブチケットの過剰在庫問題を数値で徹底解析
2024年4月にぴあ総研が発表した「公演チケット流通レポート」では、2023年度におけるお笑いライブのチケット販売枚数は前年比102%と微増したことが明らかになった。
一方で注目すべきは、完売率が68%から55%へと大幅に低下した点である。
特に漫才ライブの単独公演においては、その完売率が47%と、バラエティ寄席の61%を大きく下回る結果となった。
この数字は一見不思議に思えるかもしれないが、その背景には公演数がコロナ禍明けで1.4倍と急増したことが大きく影響している。
公演数の増加に反比例するように観客動員数が追いつかず、チケットの未消化、いわゆる空席が大量に発生し、過剰在庫問題へとつながったのだ。
また電子チケットのリセール市場では、チケット直前の放出が頻発している。
「チケプラ」や「チケジャム」などの二次流通プラットフォームのデータによると、平均転売価格は定価の78%にまで低下している。
これは需要減少を反映しており、興行会社の担当者によれば「芸人と客層の親和性は良好であっても、スケジュールが集中しすぎている」ことが最大の問題点とされている。
こうした状況は、チケットの供給過多が市場自体の価値を押し下げていることを示唆しており、販売側も興行運営の再考を迫られている。
各種指標で見える漫才ライブのチケット市場異変
以下の表に、2023年度のお笑いライブチケット販売に関する主な指標をまとめた。
| 指標 | 前年比 | 2022年度 | 2023年度 |
|---|---|---|---|
| お笑いライブ全体販売枚数 | +2% | 100(基準) | 102 |
| 完売率(お笑いライブ全体) | −13ポイント | 68% | 55% |
| 完売率(漫才ライブ単独) | データなし | 不明 | 47% |
| 完売率(バラエティ寄席) | データなし | 不明 | 61% |
| 転売市場平均価格(定価比) | −22% | 100% | 78% |
| 公演数の増加率 | +40% | 不明 | 1.4倍 |
この表からわかるように、チケットの総売上枚数はわずかに増えているものの、完売率の低下や転売価格の下落が示す通り、実質的な需要は追い付いていない状況が浮き彫りになる。
いわば、供給過多により市場が飽和状態に陥っていると言えるだろう。
また、興行側の見解として「芸人と観客の一致度は高いが、日程の集中が災いしている」という指摘は、供給量だけでなくスケジュール設計の問題も重要な要素であることを示している。
これはライブ公演の開催時期や間隔が近すぎるために、観客の分散が起き、結果として満席を作れない状況につながっているからだ。
余談ではあるが、こうした日程集中傾向はCOVID-19の影響で延期された公演を取り戻そうとする動きや、多数の若手芸人が舞台に上がる機会増大による影響と考えられる。
この背景も踏まえ、漫才ライブ運営においては戦略的なスケジューリングの再構築が急務となっている。
配信全盛時代における漫才動画の“再生在庫”過剰現象
総務省が発表した「令和5年情報通信白書」によると、10~30代の若年層の動画視聴時間は1日平均203分に達し、過去最高を更新している。
この若年層を中心に、YouTube上の「漫才」関連チャンネルの登録者数は2024年3月時点で累計1,650万人となり、前年同月と比べ122%増加するなど、漫才コンテンツの市場規模は急速に拡大している。
しかし、一方でUUUMの調査によれば、漫才動画一本あたりの平均再生回数の中央値は21%も減少しており、これが意味するところは「動画の供給過多」による視聴者の分散が顕著になっていることだ。
視聴者の数自体は増えているものの、動画の投稿本数や関連コンテンツの増加が膨大な“視聴在庫”を生み出し、個別に見れば1動画あたりの視聴集中度は低下しているといえる。
こうした傾向は広告市場にも影響を及ぼしている。
具体的には、エンターテインメントカテゴリの広告単価(CPM)は、平均で226円から192円へと下落しており、単価競争が激化していることを示唆している。
さらに、短尺動画が人気を博すTikTokの影響も無視できない。
TikTokでは15~30秒の切り抜き動画が多く拡散されており、その結果、YouTubeのフル尺漫才動画における離脱率が相対的に高まっている。
これは視聴者が短時間で得られるエンタメに慣れ、集中して長尺視聴を維持することが難しくなっていることを意味している。
こうした環境下で、YouTubeはアナリティクスのベータ版として「excess inventory alert」という新たな指標を導入した。
この指標は、動画投稿の頻度と視聴維持率のバランスをAIが分析し、投稿が多すぎて視聴が分散しすぎている場合にクリエイターへ警告を表示する仕組みだ。
結果としてクリエイターは何本も投稿し続けることが必ずしも最適ではなく、戦略的な投稿計画が要求される時代に入った。
漫才動画視聴行動に潜む消費者心理の深層とは
現在の漫才動画市場は、爆発的なコンテンツ増加により供給面では過剰に膨れ上がっている。
しかし視聴者の視聴時間が増加傾向にある一方で、視聴分散の影響から動画一本あたりの再生数が伸び悩み、全体として「視聴在庫」が積みあがってしまう構造が形成されている。
これが漫才動画の“過剰消費”現象を生み出す一因だ。
以下の表は、2023年末から2024年初頭にかけての主要な視聴関連指標を示している。
| 指標 | 数値 | 前年同月比 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 10~30代の1日平均動画視聴時間 | 203分 | 過去最高 | 総務省「令和5年情報通信白書」 |
| 「漫才」関連チャンネル登録者数累計 | 1,650万人 | +22% | YouTube統計 |
| 漫才動画1本あたり平均再生中央値 | 減少21% | −21% | UUUM調査 |
| エンタメカテゴリ広告単価(CPM) | 192円 | −15% | YouTube広告データ |
| TikTok切り抜き動画尺 | 15~30秒 | 増加中 | 視聴離脱率上昇要因 |
このデータから読み取れるのは、視聴者の動画視聴時間が史上最高を更新しているにも関わらず、個々の漫才動画の再生数が伸び悩み、広告価値も目減りしているという逆説的な現象である。
また、TikTokの短尺コンテンツが流行することで、長尺コンテンツに対する視聴者の集中力保持はますます難しくなっている。
この背景には、現代の視聴者が求める「手軽で即効性のある情報・エンタメ」を優先する心理があり、これが長時間の漫才フル尺再生の離脱率増加につながっていると考えられる。
更にYouTubeの「excess inventory alert」機能は、クリエイターが闇雲に量を増やしても視聴を伸ばせない現実をデータ面からも明示し、適切な動画投稿戦略の策定を促す役割を持つ。
こうしたツールの普及が進むことで、漫才動画の投稿スタイルに変化が生まれ、質を重視した投稿へとシフトしていく可能性が高い。
動画消費動向の変化に伴い、漫才動画市場の“再生在庫”管理はクリエイターや広告主にとっても今後の大きな課題の一つとなるだろう。
芸人グッズの在庫過剰問題とファン心理を徹底考察
2023年度、吉本興業の公式ECサイト「FANY Mall」では、芸人グッズの新商品数が前年に比べて140%増加するという大幅な拡大を見せた。
ところが、この売れ行きの伸びとは裏腹に、翌期の在庫率が32%から48%へと大きく悪化し、在庫過剰の問題が顕著となった。
同社のIR資料によれば、この結果として計上された「商品評価損」は約1.6億円にものぼっている。
この在庫問題の背景には、ファン心理と購買行動の変化が潜んでいる。
MMD研究所が2024年2月にZ世代のファン827名を対象に実施した調査では、芸人グッズを購入しない理由のトップに「使い道が限定されているから」(46%)が挙げられ、続いて「デザインが普段使いしにくい」という回答が38%に上った。
グッズの使い勝手やデザインの問題が、購入意欲を削ぐ大きな要因となっているのだ。
現場での物販状況をみると、タオルやキーホルダーといった定番商品に比べ、アパレル商品が特に売れ残りやすくなっている傾向が報告されている。
この売れ残りの理由として考えられるのは、アパレルはサイズや好みのデザインが購入の決め手となりやすく、限定的なファン層以外の広がりが見えにくいためである。
また、原料価格や製造コストの高騰に伴い卸価格も上昇していることから、在庫リスクを軽減するために、SNS連動で受注生産を可能にする「SUZURI by GMOメイクショップ」といったシステムの導入が急増している。
この受注生産モデルは、ファンの注文を受けてから製造を始めるため、余剰在庫を抱えにくくする効果があり、時代に合った新たな販売形態として注目されている。
参考となる数値を下記の表にまとめた。
| 指標 | 2022年度 | 2023年度 | 前年比推移 |
|---|---|---|---|
| 新発売芸人グッズ商品数 | 100(基準) | 140 | +40% |
| 期末在庫率(期末在庫/期首在庫+仕入) | 32% | 48% | +16ポイント |
| 商品評価損計上額 | 非公表 | 約1.6億円 | ― |
| 購入しない理由1位 「使い道が限定」 | ― | 46% | ― |
| 購入しない理由2位 「デザインが普段使いしにくい」 | ― | 38% | ― |
ファンの購買心理と在庫問題の接点として、「普段使いしやすいか」という点が消費判断に直結している実態が数字から浮かび上がってくる。
商品ラインアップの幅を広げ過ぎたことに起因する在庫の積み上がりは、それ自体が経営的なリスクとなるばかりか、ファンの購買意欲にも影響を与えてしまう。
一方で、従来型の物販に依存し続けると、こうした過剰在庫問題はさらに拡大する恐れがある。
今後はファンのニーズに寄り添ったデザインの改善に加え、生産体制の柔軟化や販路の多様化が不可欠だろう。
「SUZURI」などの受注生産システムは、在庫リスクを抑えつつファンも自分のペースで購入しやすい新しい形として、2024年以降急速に浸透することが予想される。
ファン心理が映し出すグッズ販売の盲点と解決策とは
在庫過剰問題が起こる根本には、芸人グッズの用途とデザイン面でのファンの期待と現実のギャップが存在している。
例えば、「使い道が限定的」という不満は、グッズが単なる"記念品"や"コレクション"に留まることが多く、日々の生活で使いたいファンのニーズを十分に満たしていないことを示す。
また、「デザインが普段使いしにくい」点は、価格やデザイン性のバランスが取れておらず、購入層を拡大しづらい原因につながる。
こうした心理的な障壁を突破するためには、以下のような施策が考えられる。
まず、ファッション性や実用性を高めたアパレル商品の企画強化であり、これにより「使い道が限定される」問題を緩和可能だ。
次に、デザイン面の多様性を追求し、Z世代を中心に支持されるトレンドやライフスタイルに合わせた商品展開が望ましい。
さらに、過剰在庫を減らすための受注生産システムの活用により、無理な在庫積み増しを避けつつファン心理にマッチした購入体験の提供も重要となる。
このように、ファン心理の深掘りとデータに基づく販売戦略の立案が、今後の芸人グッズ市場の健全化の鍵となる。
加えて、スタッフとファンが直接コミュニケーションできる環境を作ることで、商品の改良点や求められるデザインのフィードバックを得る仕組みづくりも期待されている。
吉本興業の動向やMMD研究所のリサーチ結果、そして最新のGMOペパボのプレスリリースは、業界全体でこうした新たな取り組みが加速していることを示している。
今後、市場の変化に柔軟に対応しながら在庫問題を抑制し、ファンの満足度向上を実現することが必要不可欠であろう。
劇場と配信の二重投資によって増大する漫才興行の在庫リスク
大阪・道頓堀に位置する「DAIHATSU 心斎橋角座」は、松竹芸能が運営する代表的な劇場の一つである。
同劇場では2022年から2023年にかけて、配信用マルチカメラの常設設置や回線増強をはじめとした舞台設備への大規模な投資を約9,000万円実施した。
この投資の目的は、ライブ公演を劇場で観覧する伝統的な形態に加え、配信チケットを組み合わせたハイブリッド興行を推進し、収益の多角化とファン層拡大を図ることにあった。
ハイブリッド興行が拡大する一方で現れる空席問題
設備投資によって「劇場+有料配信」の同時販売を増加させた結果、期待された収益増加と顧客拡大は一定の成果をみせたものの、劇場の会場稼働率には逆風が吹いた。
具体的には、改装前の稼働率69%から投資後は58%へ低下し、現場では劇場の空席リスクが拡大するという現象が生じた。
つまり、同じ公演の物理的な座席数と、デジタル配信によるバーチャル観覧の両方に対して在庫が存在する「二重在庫」の状態が表面化し、管理の難易度が著しく上がっているのだ。
こうした現象は、単純にチケット数が増加しただけではなく、観客の観覧形態が多様化したことによる「需要の分散化」が原因として挙げられる。
配信チケット売上は横ばい、ROIは期待値割れの厳しい現状
また、配信チケットの売上を見ると、対前年比108%と若干の増加にとどまり、投資に見合うリターン(ROI)は想定を下回っている状況だ。
これには、配信市場自体の成長鈍化傾向も影響している。
実際、クラウド制作会社ZAIKOのデータによれば、2023年の有料配信ライブの全体件数は微減に転じており、配信市場の成熟が進んでいることがうかがえる。
こうした背景のもと、掛けた投資に対して、物理的な劇場稼働率の低下と配信売上の伸び悩みが相まって、経営効率の悪化を招いている。
適正在庫管理の必要性を説く最新の学術的知見
この課題については、2024年3月発行の学術誌『舞台芸術マネジメント研究』(第12号)も重要な指摘をしている。
同誌では、デジタル投資後に起きている「座席在庫増大」の問題を分析し、劇場での物理的座席と配信チケットの両面において、適正在庫の管理が求められていると結論づけている。
いわば、単純に劇場チケット数+配信チケット数を増やせば収益増となるわけではなく、需要動向を見極めつつ両チャネルの販売数量を精緻に調整する必要があるのだ。
これは漫才興行に限らず、多くの舞台芸術分野における複合的チャネル展開で共通したリスクとなる。
漫才興行に特有のリスクと今後の展望
漫才ライブは従来、劇場での観覧が主流であったが、有料配信の導入により、ファンは場所を選ばずに視聴可能となった。
この利便性は面白さを牽引する一方で、現地来場を躊躇させる要因ともなっており、いずれかの興行形態の需要減少を招きかねない。
さらに、公演数全体が増加傾向にあることも、チケットの過剰在庫化を加速させる要素である。
このため、漫才興行を運営する事業者は、単にハイブリッド形態を推進するだけでなく、チケットの価格設定、販売数量、配信タイミングを精密にコントロールし、両チャネルの最適なバランスを模索し続ける必要がある。
また、制作側や劇場側の運営効率を高めるためには、デジタルトランスフォーメーション(DX)を活用した需要予測や販売データ分析の強化も不可欠であろう。
今後、漫才ライブにおける“二重在庫リスク”の克服は、劇場興行と映像配信の共存・共栄を実現する鍵として、業界全体が注目すべきテーマとなっていく。
過剰漫才コンテンツ消費と広告在庫パフォーマンス考察
2024年のデジタル広告市場において、お笑いチャンネル枠の広告在庫が顕著に拡大していることが、CyberAgentの「ABEMA広告レポート2024 Q1」から明らかになった。
前年同期比で広告在庫のインプレッション数は118%に増加し、その中で漫才番組が占める割合は42%に上る。
しかしながら、この増加に伴い広告到達単価(CPM)は同枠全体の平均と比較して14%低下している。
この背景には、漫才コンテンツの同時視聴率がピーク時間帯に集中しすぎ、配信側の広告供給量が過剰となってしまっている事情がある。
視聴者の注目が一点に集まりすぎることで、その時間帯の広告枠が過密化し、広告価値が下がるという典型的な需給アンバランスの構図が浮き彫りとなった。
こうした状況を踏まえ、TVerは2023年10月より「デイタイム限定ターゲティング」という新たな在庫調整施策を導入している。
この施策はピーク後の時間帯に広告配信を分散させることで、インプレッションの平準化と広告単価の改善を図るものだ。
さらに、博報堂DYメディアパートナーズが2024年2月に発表した視聴ログ解析の結果によると、漫才番組におけるアドポッド(広告挿入ポイント)スキップ率は前年12%から18%へと増加。
このスキップ率の上昇が意味するのは、視聴者の広告への関心低下と広告効果の希薄化だ。
広告主側ではROI(投資収益率)の低下を懸念し、漫才番組の広告枠購入に慎重になる傾向が強まっている。
つまり、漫才コンテンツの人気が高まる一方で、広告効果の効率的な最大化という課題が顕在化しているのだ。
この結果から読み取れるのは、コンテンツ消費の過熱が広告枠の需給バランスを崩し、単価下落や効果減少を招くリスクである。
広告プラットフォーム各社は、時間帯別のターゲティング調整、広告挿入の最適化など多角的な対応策を迫られており、持続可能な広告市場構築のためにはこの「過剰消費」による供給過多のコントロールが欠かせない。
なお、この数値および分析はCyberAgentの決算資料、TVerの公式発表、そして博報堂DYメディアパートナーズのレポートを基にしている。
漫才広告市場における需給過多のメカニズムと課題
漫才番組の視聴率がピーク時間帯に集中することで、その時間帯の広告在庫が増大し、結果として市場における供給過多の状況が生まれている。
広告の到達単価であるCPMが平均より14%低いことは、供給過多が潜在的な価値の希薄化に直結していることを示している。
視聴ログ解析でのアドポッドスキップ率の上昇(12%→18%)も、視聴者の広告回避行動が顕著に増えていることを映し出している。
このように漫才コンテンツに注目が集まる反面、広告主が期待する視聴者の関与度や広告効果は下落傾向にあり、投資意欲の鈍化が懸念される。
この構造的な課題は、コンテンツ提供側、広告販売側双方にとって持続的な収益確保のために重要な経営課題となっている。
今後は、広告在庫の需給コントロールや視聴者の広告耐性を踏まえたクリエイティブの刷新、ターゲティングの精緻化が必要不可欠である。
併せて、TVerのような時間帯分散の試みが効果的に機能するかどうかも今後の動向を左右する重要なポイントだ。
広告効果の最大化と視聴者体験の両立を模索する中で、漫才コンテンツの価値向上戦略が進化することが期待されている。
消費者が得する漫才在庫活用術と適正課金モデル考察
2024年3月、ローソンチケットはお笑い公演の売れ残りチケットを対象に、開催当日の12時以降に最大40%オフで販売する新機能「Loppiラストミニッツ」を正式にリリースした。
この取り組みの特徴は、在庫として残ったチケットを有効活用し、直前に購入を検討する消費者へ割安に届ける点にある。
対象の約8割が漫才ライブという点からも、漫才公演におけるチケットの過剰在庫が業界の大きな課題であることがうかがえる。
実際、リリース後3週間の利用者数は延べ4.6万人に上り、ユーザーからの平均満足度は5段階評価で4.3と高評価を記録している。
この仕組みは、需要のタイムリーな喚起と供給余剰の解消を両立させる優れた在庫循環モデルの一例と言えるだろう。
一方、Netflix Japanも2023年12月から日本限定で「ライブ配信単体課金」を導入した。
これまでは月額会員制の配信を主軸としていたが、単発で漫才特番を見ることができる個別課金モデルを設定。
平均単価は約600円で、月額会員との差別化を明確にしている点が特徴的だ。
この課金モデルは、月額料金を払わずに単独公演や特番を選んで視聴したい消費者ニーズに応えるとともに、“配信在庫”の消化促進を狙っている。
また、メルカリShopsでは、ファンと芸人を直接結ぶ公式リユース企画がスタートしたことにも注目したい。
この企画では、舞台衣装や小道具、さらには限定グッズなど、通常は廃棄されるか倉庫に眠るアイテムをファンの手に届ける新たな流通経路を築いている。
結果として販売商品の多くが即完売となっており、ファンが“在庫循環”に積極的に関与できる点が特徴化している。
こうした動きは、漫才やお笑いライブ市場が抱える「単なる過剰在庫問題」から「ファン参加型の循環型消費モデル」へと転換しつつあることを示す好例と言えるだろう。
| サービス | 特長 | 対象在庫の種類 | 利用者数・反響 |
|---|---|---|---|
| ローソンチケット「Loppiラストミニッツ」 | 開催当日12時以降に最大40%OFF販売 | 売れ残りライブチケット(8割が漫才ライブ) | 3週間で延べ4.6万人利用、満足度4.3/5 |
| Netflix「ライブ配信単体課金」 | 単発視聴に特化した課金モデル導入 | 漫才特番ライブ配信 | 平均600円、月額会員との差別化促進 |
| メルカリShops「芸人公式リユース企画」 | 舞台衣装・小道具のファン向け再販 | 公式リユースグッズ、限定品 | 販売商品ほぼ即完売 |
このように、漫才ライブ及び関連グッズの過剰在庫問題に対し、業界各社は在庫を適正に処理しつつ消費者メリットを最大化する多様な仕組みを模索している。
特に、在庫が消費者にとってより手に取りやすい価格や品揃えの形に変化することで、結果的に市場全体の活性化が促されている点は重要である。
そして、適正課金モデルの導入は、消費者の支払い意欲と購入・視聴行動のペースを細やかに調整できる点で非常に効果的といえる。
今後も、ライブ開催の直前割引や配信の単体課金、さらにはファン参加型の二次流通など、多角的な市場活性化策がさらに発展することが期待される。
ファンの視点から見れば、「欲しいものが手に入る最適タイミング」と「購入しやすい価格設定」が揃うことが、漫才コンテンツの享受度と満足度向上につながっているのだ。
こうした動きは、アナログの座席数や物販の在庫にとどまらず、デジタル配信やオンライン二次流通を含めた総合的な「漫才コンテンツ在庫マネジメント」の新たなステージを示唆している。
今後の適正課金の方向性と課題
単発視聴や直前割引といった柔軟な課金モデルは、消費者のニーズにマッチしやすいものの、事業者側にとっては収益のボラティリティ増加を伴う。
そのため、長期的には月額会員制とのバランスや公演ごとの価格差別化、販売タイミングの最適化を高度に設計する必要がある。
また、ファンのリユース参加による在庫循環は、二次的価値創出という観点では優れるものの、公式流通としての信頼維持や適正価格管理の面での課題も存在する。
これらはマーケットプラットフォーム側と芸人・興行側が緊密に連携してルール設計していくことが求められる点である。
こうした多様な仕組みの成熟は、漫才市場における在庫問題の根本的解決には不可欠であり、さらにはファンエンゲージメントを深める土壌としても重要となろう。
消費者が得をしつつ、漫才ライブや関連コンテンツの過剰在庫を適正に活用する動きが2024年に入り加速している。
ローソンチケットの「Loppiラストミニッツ」機能は、直前割引によってライブ公演の未消化チケットを効率的にさばき、多くのファンに好評を博した。
一方、Netflixのライブ配信単体課金モデルは、月額制と異なる柔軟な視聴スタイルを提供し、配信の視聴在庫対策として注目されている。
さらにメルカリShopsのようなプラットフォームが芸人の舞台衣装や小道具を扱うことで、ファンが「在庫循環」に能動的に参加可能な新潮流も形成されている。
これらの施策は単に余剰在庫を消化するだけでなく、消費者の購入心理に応じた価格や販売時期の最適化、さらにはファン参加による価値創造という多角的アプローチを展開している。
今後はこのような先進的な在庫活用術と適正課金モデルの共存が、市場の持続的活性化とファン満足度向上の鍵を握ると考えられる。
