去年の上着を出した日のメモ
今朝の体重は61.8kg。少し厚手の上着を出そうと、しまってあった服を広げた。去年と同じ物だが、前を閉じたときの感覚が少し違った。鏡の前で何度も確かめるほどではなく、今日は袖を通してそのまま着た。体重の数字は毎回見ているのに、普段使う物に触れたとき、少しずつ変わってきたことを別の形で感じる。今日はそのことも残しておく。
服を出すついでに、ポケットの中を確かめた。折れた買い物メモが一枚入っていた。今と似た食材の名前もあり、すでに使っていない物もあった。何を食べるか悩んでいた頃の自分が、紙の上には残っている。今なら店へ行く前に、冷蔵庫を一度見るだけで決まることが多い。食事の形を落ち着かせるまでに、買い物のほうもずいぶん簡単になったらしい。
一食目はごはん、納豆、豆腐と大根のみそ汁。大根は少し前に買って、使う分を分けておいた。キャベツが基本にあるが、店で食べたい物があれば別の野菜も使う。同じ食材を守ることを目的にすると、棚の前で迷う理由が増えてしまう。今日の汁物は大根を先に煮て、豆腐をあとから入れた。順番が一つ違うだけで、いつもの支度に少し変化ができた。
食べ始める前に上着を椅子へ掛け、食卓の上を空けた。料理以外の物があると、食事中に用事を思い出して立ち上がることがある。今日は紙も画面も端へ寄せ、器だけ置いた。片づけてから食べればよかったと思う日は何度もあったが、先に動かすだけならそれほど時間はかからない。食べ方を細かく決めるより、目の前の物を減らすほうが簡単な日もある。
午後、上着を着て近くまで歩いた。いつもと同じ道だったが、歩き始めの空気が前より冷たく感じた。途中で手をポケットへ入れ、買い物メモがもうないことを確かめた。何か運動を増やそうと出たわけではなく、必要な物を買いに行った。歩数を確認する前に、今日は上着が必要だった、と書いておいた。道の様子や着ていた物が残ると、その日の外出を思い出しやすい。
帰ってから、普段着る物を手前へ移した。服を減らすのはまた別の日にして、今日は取り出す順番だけ変えた。台所の道具を並べ直したときと似ている。使う物がすぐ出てくると、始めるまでの手間が小さくなる。生活を変えるというと何かを足すことを考えやすいが、取り出しやすくするだけで助かる場面もある。食事以外にも同じ工夫が使えるのが面白かった。
一日二食の間には、お茶をいれて少し休んだ。上着の整理が途中だったので、続きを急いで終えようかと思ったが、今日は時間に余裕があった。食事のことを考える時間が少なくなると、その分を全部別の用事で埋めたくなる。けれど、何も進めていない時間までなくす必要はない。テーブルの端に置いた古いメモを眺め、あとで日記にはさんでおくことにした。
夜はキャベツとツナを温め、ごはんと冷ややっこを添えた。昼の大根が少し残っていたので、明日の汁物に使う予定も書いた。いつもより食材が一つ増えても、使う順番がわかっていれば負担にはならない。逆に、少ない材料でも何に使うか決まっていないと、台所で考え込む。今の自分に必要なのは、種類を絞ることだけではなく、次の行き先が見えていることらしい。
食後に服をしまい終え、椅子の背を空けた。上着を出しただけの日のつもりだったが、昔のメモが見つかり、今の支度と比べることができた。体重の動きを毎日追っていると、変化が小さく見えるときがある。今日は服の感触と買い物の紙が、時間の長さを少し思い出させてくれた。どちらも数値にはしづらいが、記録に書く理由は十分あった。
最後に、上着はまだ普通に使える、と一行加えた。サイズが変わったかどうかを確かめるために、わざわざ新しい物を買う予定はない。手元の物で暮らし、その中で変化に気づければよい。明日の買い物メモには、使い切りそうな納豆だけを書いた。去年の紙よりずっと短い。今夜はその二枚を並べてから、記録帳を閉じた。
